Mikiko's Room

 ゴシック系長編レズビアン小説 「由美と美弥子」を連載しています(完全18禁なので、良い子のみんなは覗かないでね)。
 「由美と美弥子」には、ほとんど女性しか出てきませんが、登場する全ての女性が変態です。
 文章は「蒼古」を旨とし、納戸の奥から発掘されたエロ本に載ってた(挿絵:加藤かほる)、みたいな感じを目指しています。
 美しき変態たちの宴を、どうぞお楽しみください。
管理人:Mikiko
センセイのリュック/幕間 アイリスの匣 #172
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戯曲『センセイのリュック』作:ハーレクイン



幕間(小説形式)アイリスの匣#172



 道代は窓枠に手を掛けたまま、隣の秀雄を振り向いた。志摩子も、秀男を見つめる。
 秀男は、悠然と二人の視線を受け止めた。
 志摩子は、一瞬道代と目を見交わした後、秀男に声を掛けた。

「開けたあかんて、なんでやのん、秀はん」
「そうですがね秀はん。姐さん、汗かいてはります。窓開けて風入れな……」

 秀男は取り合わない。二人を見返す視線そのまま、悠然と答えた。

「姐さん、お道はん。お忘れでっかいな。さっき駅で見かけた蒸気機関車。あの真っ黒けの、煙吐いて走るやつ。
 あれがこの列車の先頭にもおるんでっせ。ほんで、石炭燃やしいの湯う沸かしいの……煙やら煤やら撒き散らして走っとります。窓開けたりしたら、その煤や煙がわんさと入ってきて……姐さんのその白いお顔、真っ黒けになってまいまっせ」

 道代と志摩子は、思わず顔を見合わせた。
 志摩子があきれたように、半ば感心したように声を上げた。

「んまあー、そうかいな、秀はん」
「へい。しやから、すんまへんがしばらく御辛抱を。あともうそないにはかかりまへんよって。あともういっこ(一個)。『花園駅』過ぎたら、ほの次が『嵯峨駅』ですよって」
「ふん」
「姐さん。こっちの方はそれほど熱ないようですよって、席替わりまひょ」
「ほうか。ほらすまんなあ、道」
「ほれに姐さん。お羽織りの道行、お脱ぎやして」

 道代は、甲斐甲斐しく志摩子の道行を脱がせた。手早く畳んで自らの膝に載せる。今まで自分が座っていた座席。秀男の隣に志摩子を座らせた後、入れ替わりにこれまでの志摩子の席に腰を掛けた。
 いつ取り出したのか、自らの扇子を開き、志摩子に風を送る。

「失礼します、姐さん」
「おおきに、道。いやあー、涼しいことねえ」

 秀男は、半ば目を見開いて二人の様子を見守った。道代は志摩子の付き人。本来あり得ない、舞妓の付き人。
 そうは承知していても、目の当たりに主従のやり取りを見せられると、改めてそのことに感じ入る秀男であった。

(なあるほどのう)
(この二人……言い古された言葉やけんど、切っても切れん仲、ゆうことなんかのう)


 国鉄山陰本線の普通列車は、『嵯峨駅』に到着した。
 ホーム手前で列車は速度を落とす。その揺れに耐えながら、三人は降りる支度をした。志摩子は、脱いだ道行を再び羽織らねばならないので手間取っている。列車は、嵯峨駅のホームに停車した。

「姐さん、そないに慌てはらんでも大丈夫ですわ。この駅には2~3分停まりまっさかい、ゆっくり支度しとくんなはれ」

 そうは言われても、旅慣れない志摩子と道代の気は急いた。とても手早く、とはいかないが志摩子は先ほど脱ぎ捨てた道行を羽織る。志摩子と道代の手荷物は、半分以上を秀男が抱え込んだ。車内中央の通路を出入り口に向かう。秀男、志摩子、道代の順に三人は国鉄『嵯峨駅』のプラットホームに降り立った。
 三人の横を、ここまで乗ってきた国鉄の旅客列車が、速度を上げながら出てゆく。秀男はゆったりと見送るが、道代と志摩子は体を持って行かれそうな恐怖に囚われた。二人は、知らぬ間に両手を握り合い、抱き合うばかりにしながら、秀男に倣うように、ホーム横を遠ざかっていく列車を見送った。その列車の向かう先は京の名勝、保津峡。さらにその先は、京都市に隣接する亀岡市であるが、そのようなことは道代と志摩子の知らないことであった。
 列車は更に遠ざかっていく。目を凝らすと、その先はトンネルに吸い込まれていくようであった。

「いきまひょか、姐さん」

 秀男が二人に声を掛けた。
 道代と志摩子がその声に振り向いたときには、秀男は改札口に向かって歩き始めていた。ホーム上には、三人以外の人影は無かった。道代と志摩子は、夢から覚めたように、秀男を追った。
 改札を出た三人は、『嵯峨駅』の小さな待合室を抜け、駅前の広場に立った。風は冷たいがさほど強くは無く、穏やかな冬の陽射しが迎えるように三人を包み込んだ。


「こっちですわ、姐さん」

 秀男は、右に向き直り歩き始める。そちらは亀岡方向。先ほど、三人の乗ってきた列車が遠ざかって行った方向だったが、もちろん列車は既にどこにも見えない。秀男が、道代と志摩子を引き連れて歩く道は、国鉄山陰本線の鉄路のすぐ脇の小径であった。
 秀男は黙りこくって先頭を行く。つられたように、道代も志摩子も口を利かず、秀男の後を追った。
 三人の辿る道は、山陰本線の鉄路に付かず離れず、京都市に背を向け、亀岡市の方向に伸びる。そちらは西の方向であった。

「あ、川……」

 小さな橋を渡りながら、志摩子が呟いた。
 その呟きが聞こえたか、秀男が足を止め、振り向きながら笑い交じりの声を掛けた。

「姐さん。これは川ちゃいます」
「え、せやかて……」
「これは水路ですわ、姐さん」
「すい、ろ……」

 志摩子は、小首をかしげ、鸚鵡返しに秀男に問いかけた。

「そうです。田んぼやなんやらに水を引くための、人が作った川ですなあ」
「へええ。それは大変なことやねえ」
「川沿い見てもろたらわかりますが、土手やおまへん、石垣になってますやろ」
「あ、そないゆうたら……」
「おそらく……北山から流れてきて、最後は桂川に流れ込むんやと思いますわ」

 道代が話に入ってきた。

「秀はん。桂川て……あの、渡月橋のあたりですやろか」
「お、よう知っとるのう、お道はん。せやなあ、そないな見当やろかのう」

 三人の辿る道が、少し広い通りに行き当たった。秀男は左に折れる。道代と志摩子は小走りに後を追った。
 秀男が振り向き、道代に声を掛けた。

「お道はん、この道をこのまままっすぐ行ったら渡月橋や」
「へえ、そないどすか」
「おお。その近くに嵐電(らんでん)。嵐山電車の終点、嵐山(あらしやま)駅もある。まあ、賑やかなとこやが、今頃はどうかのう。このあたりでこないに人が少ないゆうことは、渡月橋あたりも人出は少ないんかもしれんのう」

 秀男は、いくらも歩かずに今度は右に折れた。道幅は再び狭くなる。だが、変わらず人影は少なく、閑散としていた。
 少しうつむき加減に歩いていた道代は、これまで浴びていた穏やかな冬の陽射しが翳るのを感じた。無意識に感じていた穏やかな風も止まっている。道代は目を上げた。思わず声が出た。

「まああー」

 道代の目の前に、竹の叢が見えた。その竹叢は、三人が辿る小径の左右にどこまでも広がり、その果は見えない。
 連なり重なり林立する竹の群れ。
 竹は、樹ではなく草である。そして、その根は地中で繋がり、連なり、竹群れの全ての個体を地下で繋いでいる。いや、その表現は不正確である。
 竹の個体は、地下で根を横に伸ばす。地下茎である。その地下茎は随所で上に伸び、成長し、地面を割って空中に伸び、新たな個体になるのだ。つまり、一群れの竹林は、全て地下茎で繋がっている。いわば、一群れの竹林はすべて同一個体、群れそのものが一個体なのだ。
 だが、そのようなことは道代や志摩子はもちろん、秀男も与り知らぬところだった

 一本一本の竹は、互いに少し離れて上方に伸び、枝を張っている。したがって、空中では、多くの竹の枝が絡み合い、重なり合い、天を覆い隠している。
 しかし地面近くでは、竹の茎どうしは少し離れている。したがって、竹林を横から見れば、その隙間を通して向こうが見通せそうである。しかし、今道代が見ている竹林の竹の数は尋常のものではない。数知れぬ竹の茎は重なり合い、人の視線を遮り、竹林の向こうを見通すことを拒んでいる。道代は、幾本とも知れぬ竹群れに視線を遮られ、眩暈のようなものを感じた。
竹林

(何だ)
(なんだ)
(お前はなんだ)
(何しに来た)
(何をしに来た)
(ここは我らの領地だ)
(ここは、我らの縄張りだ)
(お前などの来るところではないわ)
(帰れ)
(戻れ)
(出て行け)
(とっとと立ち去れ)
(いね)
(去〔い〕ね)
(去ね)
(去ねえええええええええ)

「ひっ」

 道代は、悲鳴を飲み込んだ。
 いや、呑み込んだつもりだった。
 だが、口の端から、その悲鳴は漏れ零れたのだろう。
 志摩子が振り向き、道代に問いかけた。

「どないしたん、道」
センセイのリュック【幕間 アイリスの匣 #171】目次センセイのリュック【幕間 アイリスの匣 #173】

コメント一覧
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    • ––––––
      1. Mikiko
    • 2016/11/01 07:22
    • ハーレクインさん
       ご病気のため、29日より入院されています。
       きのう、31日の午後、手術を受けられました。
       全身麻酔の手術と思われますので、コメントはしばらくお休みとなります。
       退院は、今月半ばのご予定とか。
       『アイリスの匣』の連載についても、退院後、しばらくしてからの再開となります。
       ご了承ください。

       さて、本編。
       ようやく、列車を降りました。
       後半に出てくる龍安寺まわりの竹林は、著名な観光ポイントのようです。
       そのため現在は、本編にあるような静寂を期待するのは無理だと思われます。
       竹より人の頭の方が多いとのこと(ハーレクイン氏談)。
       静寂に浸れるとすれば……。
       夏至のころの早朝、4時くらいじゃないでしょうか。

    • ––––––
      2. カラ手形ハーレクイン
    • 2016/11/02 17:57
    • ということでございまして
      ようやく嵯峨野にたどり着いた小まめ姐さんご一行。舞台は嵯峨野最大の売り物『竹林の道』でございます(管理人さん、画像UP有り難う)。ただひたすら竹、竹、竹、たけ……。シンプルな光景です。
      ただ、わたしが取材に行ったときは秋の観光シーズンの真っ最中。ただひたすら人、人、人、ひと……。
      しかもその多くが外国人。しかもしかも、そのほとんどが中国人(大陸か台湾かは不明)。いやあ、爆買いツアーもここまできたか、というところでした。

      管理人さんにご紹介いただきましたようにわたくしHQ、またも入院騒ぎです。まあ今回は2~3週間ということで、さほど長期間ではありません。このくらいなら『アイリス』は書き溜めてまとめ草稿し、休載はしないぞ、と意気込んでいたのですが、残念ながら果たせませんでした。
      (いつものことや) それはそうなのですがここからの『アイリス』。いよいよ「志摩子の恨み」を明かしていくことになりますが、この構成がうまくいかないんですね。入院中にじっくり考えたいと思います。

      ということでございまして『アイリス』、しばらく休載させていただきます。再開後の展開に乞う!ご期待。

    • ––––––
      3. 手羽崎 鶏造
    • 2016/11/02 21:58
    • ハーレクインさま
      早いご快方を祈念しております。
      (ナースネタなど、たっぷりご堪能
       くださいますように)
      お元気な復活を心待ちにしております。

    • ––––––
      4. Mikiko
    • 2016/11/02 22:05
    • ただいま
       飲み会から帰りました。

       実は、手術当日、トイレの窓の女郎蜘蛛がいなくなったのです。
       これはひょっとして……。
       ハーレクインさんが、儚くなられたという知らせかと案じておりました。
       ご無事で何よりです。

       酔っ払っておりますゆえ、他のコメントには、明日、レスさせていただきます。

    • ––––––
      5. 悪運強しハーレクイン
    • 2016/11/02 23:02
    • 手羽崎鶏造さん&Mikikoさん
      >手羽崎鶏造さん
      お見舞い、有難うございます。腎臓1個を丸ごと切除ということで、それほど難しい手術ではなかったようです。ただ、当たり前のことですが、傷跡がしつこく痛みます。医者に聞いても看護師に聞いても、申し合わせたように同じ答えが返ってきます。「日にち薬やから」。
      対応マニュアルみたいなのがあるんですかね。


      >Mikikoさん
      「Mikiko 女郎蜘蛛に人生の儚さを見る」ってとこかな。おー、かっちょええって……勝手に殺してんじゃねえよ。

    • ––––––
      6. Mikiko
    • 2016/11/03 07:37
    • 女郎蜘蛛さん
       きっと、身代わりになってくれたのです。
       これからは、決して蜘蛛を蔑ろにしてはなりません。
       蜘蛛を大事にしていれば……。
       地獄に落ちたとき、きっと白い糸が降りてきます。

    • ––––––
      7. 『蜘蛛の巣城』HQ
    • 2016/11/03 08:48
    • ?わたしは……?
       蜘蛛の巣を見かけると、潰すようにしています。

      >白い糸が降りて……
      カンダタ(漢字わからん)かい!

    • ––––––
      8. Mikiko
    • 2016/11/03 12:39
    • なんで潰すんですか
       蜘蛛は益虫でしょう。
       うちの庭は、蜘蛛の巣だらけです。

    • ––––––
      9. 『絡新婦の理』HQ
    • 2016/11/03 16:27
    • ?蜘蛛の巣?
      は、気づかない間にこちらの顔に引っかかり、ひどい時は口の中まで入って来たりします。まあ、そのうっとうしいこと、気色わるいこと。
      夏場に、こちらの近郊の山歩きをするときは、拾った棒っ切れを振り回し、蜘蛛の巣を払い落としながら歩かねばなりません。

    • ––––––
      10. Mikiko
    • 2016/11/03 18:24
    • 地獄に落ちても……
       白い糸は降りて来ないと思います。
       わたしには、3本くらいは来るでしょう。

    • ––––––
      11. ♪天使の誘惑HQ
    • 2016/11/03 20:51
    • ?そもそも……?
      地獄にゃ堕ちんもーん。
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